W杯第1戦レポート

公式からのお知らせ

今シーズンUCI国際大会の幕開けとなるワールドカップがフランス/パリで始まった。今後、ワールドカップパリ大会を含めて6戦戦い、2月終わりからポーランドで行われる世界選手権までを戦うことになる。
各国は、現在のチームのコンディション、獲得できているポイントなどを考慮しながら、出場大会を決めていく。今回のパリ大会は、本場ヨーロッパの大会であり、強国が勢揃い。日本短距離チームは、「腕試し」とでも言うように、昨シーズンの実績や国内選手権の結果などを考慮したメンバーで参加。
一方、中距離チームは、初戦をスキップし、第2戦カナダ大会からの出場を見込んでいる。

■女子スプリント

ワールドカップパリ大会2日目。今大会男女共にチームスプリントでの出場を見送った日本短距離チームは2日目のプログラムで満を持して登場。
女子スプリント予選の200FTT、まだまた国際大会では実績のない太田りゆは33人中6番目の発走。小林優香は15番目の発走となった。
小林優香の後には、マチルド・グロ、ロリーヌ・ファンリーセン、ナターシャ・ハンセン、アナスタシア・ボイノワ、リー・ワイジーなどおなじみのメンバーが並ぶ。実績が発走順に大きく影響する200FTTの最終走者は、ステファニー・モートン。
太田は、11.113で予選を24位で通過。続く小林も10.979と10秒台をマークし17位で予選通過。
スプリントでは、1から4位が直接1/8決勝へ5から28位が1/16決勝へ進む勝ち上がりのため、2人の日本人選手は共に1/16決勝からの本戦スタートとなった。
これまで、予選を通過できるかどうかハラハラしながら見ていたスプリント予選をこれほど、余裕を持って見られるのは、日本女子選手の力量が世界と戦えるレベルに上がってきたことを物語っており、嬉しい限りだ。
ちなみに予選1位は、モートンの10.516。地元の大声援の中発走したマチルド・グロは、10.609の3位でダイレクトに1/8決勝へ。
日本勢には、このレベルと互角に戦うタイムをオリンピックまでには期待したいものだ。

1/16決勝
太田りゆは、短期登録でお馴染みのロリーヌ・ファンリーセンと対戦。
ファンリーセンを先行させ、追い込む作戦だったが、スピードの上がったファンリーセンに身体半分届かずここで敗退。一方の小林優香は予選タイムではほぼ同じの香港、ジェシカ・リーを自分の届く位置を計ったようにゴール前で捉え勝利。1/8決勝に駒を進めた。
太田は、「ファンリーセンを先に行かせて、捲れるかな、捲れるかなと思ってたら、気がついたら終わってました」と言葉少なだった。

1/8決勝

小林優香は、予選タイム1位のステファニー・モートンと対戦。後ろ攻めから1/16決勝と同様に残り1周追い込んで行くが、調子の良いモートンを捕らえるにはいたらず、ここで敗退となった。
「ステファニー・モートン、絶好調みたいだし、仕方なかったね」と声をかけると「そうなんですか?でも、なんかなぁ」と不満そう。「今日のは、忘れて明日ケイリンで頑張ります」とすでに気持ちを明日に移していた。

決勝

決勝は1/8決勝で小林優香を下したオーストラリアのステファニー・モートンと、香港のリーワイジーの対決。
1本目、先行したモートンをゴール前、リーワイジーが差し、そのままの勢いで2勝してリーワイジーが勝利した。3位には、大歓声に背中を押された地元マチルド・グロが入った。

女子のスプリントについてブノワヘッドコーチは、「今の二人の持ちうる力からすれば、及第点。これまでスプリントについては予選突破もままならなかったことを考えると健闘していると言わなければならない。唯一、優香のモートン戦についてコメントするならば、もっとプッシュして相手にプレッシャーをかけなければならなかったことくらいかな」と、今回の戦績が想定内であることを匂わせた。

■男子ケイリン

予選

アジアチャンピオンのジャージを纏った河端が出場。
予選は、落ち着いたレース運びで、イギリス・ジャック・カーリンと共に危なげなく2着までが直接進めるセカンドラウンドに進出。一方、脇本は、若干後手を踏んだ形で残り2周のバックでまだ7番手の最後尾。最終周で巻き返そうとするも5着までしか届かず、敗者復活戦へ。

敗者復活戦

1着を取るしか、次に進む道はない敗者復活戦、脇本の組にはウクライナのビノクロフやリトアニアのリンデルがいたが、「これこそが、いつものワッキーだ」と思わせる2周半近い大逃げで快勝。予選の不安を払拭し、2回戦に駒を進めた。
「予選ではワキモトは、本来の自分を忘れたが、次のレースでは”我々の知っているワキモト”を取り戻した。今のところOKと言っておこう」とブノワヘッドコーチも決勝に向けての期待を口にした。

準決勝

準決勝、河端と脇本は同じ組になってしまい、さらにその組には、グレーツアー、ぺルビス、ドーキンスがいるというハードな状況となった。
2枠からのスタートだった脇本は、ブノワコーチの指示通り、脚質を活かしたロング先行を再び演じ、最終第4コーナーまでは、先頭でまわる。最後に差されはしたものの、3着に逃げ残り決勝進出を決めた。一方、6枠発走で、最後尾からの攻めになった河端は、グレーツァーの後ろから、前に出るタイミングをうかがうも、出口を塞がれた状態となり、4コーナーを回った後猛追して4着まで追い上げたが、そこまで。惜しくも決勝進出は逃してしまった。
7ー12位決定戦は、内に詰まるのを避けるため、外のコースを回るが、これはこれで大きく回ってしまうこととなり、4着。総合10位が決定した。

決勝

今シーズンUCI国際大会の幕開けとなるワールドカップがフランス・パリで始まった。
ワールドカップ第1戦2日目の男子ケイリンには、脇本雄太(福井)と河端朋之(岡山)の2名が出場し、脇本が決勝に進出した。

予選5着、敗者復活1着、準決勝3着で脇本が辿り着いた男子ケイリン決勝は、ペーサー退避後、テオ・ボスが先行、イギリスのジャック・カーリンがそれを追い、脇本は3番手の位置を確保する。ジャック・カーリンがテオ・ボスを交わしに踏み出したタイミングで、さらにその上を脇本が踏み出し、最終3コーナー付近では、一気に前へ。そのまま後続選手を寄せ付けず見事に快勝した。

昨シーズン、脇本が金メダルを獲ったとき、ブノワコーチは、「ワキモトには、モーターがついている。ワキモーターだ!」と言葉を発したが、今大会も、”ワキモーター”はブンブン回った。
敗者復活、準決勝と素晴らしい逃走劇を見せ、決勝では脇本に先行させまいとする他の選手の動きを落ち着いて処理した。

「自分は、もう挑戦者ではないと自覚した」という脇本を擁する日本短距離チームは、強豪が揃った自転車の本場でのワールドカップで、見事に男子ケイリンで金メダルを獲得し、オリンピック出場権のポイント獲得が始まった今シーズンのワールドカップ初戦で最高の結果を出した。

◇脇本選手コメント

「準決勝の大逃げで3着は、”これは行ける”と思った?」という質問に対して、
「準決勝というよりは、敗者復活戦がポイントでした。あれ(敗者復活戦の競走)で、何かが吹っ切れたというか、頭の中に”ピカッ”とひらめいたというか、『もう自分は、挑戦者ではないんだ。挑戦を受ける立場なんだ。だから、小さい競走をしてはいけない』と思ったんですよね。予選は、そのような意識がなくて固まっちゃったので。だから、予選で負けたのは、意味があったと思います。1回目のメダル(2017年12月ワールドカップ第4戦チリ大会で獲得した男子ケイリン金メダル)がまぐれではないと、これで証明できてよかったです。ありがとうございました」

男子ケイリン決勝

優勝 脇本雄太 日本
2  DAWKINS Edward ニュージーランド
3  MAKSEL Krzysztof ポーランド
4  ジャック・カーリン イギリス
5  テオ・ボス オランダ
6  CANELON Hersony ベネズエラ
6  PERALTA GASCON Juan スペイン(降格)

大会最終日、日本チームの出場種目は、男子スプリントと女子ケイリン。

■男子スプリント

予選

41人中、深谷18位(9.860)、河端20位(9.916)、脇本24位(9.951)で予選通過。予選1~4位はダイレクトに1/8決勝へ。5~28位は1/16決勝へ。
予選突破も危うかったこれまでを考えると、順当に予選を突破できるのは、基礎の脚力が上がっているからに他ならない。

1/16決勝

脇本は、ドイツのレビと対戦。先行するレビに最終バックから追いすがるも、半車身届かず、ここで敗退。河端も組み合わせ上、ブフリと当たってしまい、終始追う形となり、敗退となった。深谷は、ドミトリエフと。様子を見ながら、スパートの機会をうかがうが、ドミトリエフのスプリントを知り尽くした走り(相手のスピードを自分のタイミングまでコントロールする走り)になすすべがなく同じく敗退してしまった。これで、短距離チーム男子のパリ大会は終了。
スプリントは、1対1の勝負であり、心理戦の部分も大きい。そういう意味で日本の競輪選手には、スプリントにおいてはさらなる経験が必要かもしれない。

■女子ケイリン

予選

太田りゆは、首尾よく先行するファンリーセンの後ろをとらえたが、コーナーで一瞬コースを開けたすきにシュメルバに入られ、3着で敗者復活へ。
小林優香は、残り2周回、最後尾から車をあげ、前を走るモートンを追う。並走するマーシャンに競り勝ち、2着奪取でダイレクトに2回戦へ。
ダイレクトに勝ち上がったのはファンリーセン、シュメルバ、モートン、小林、リケイシ、ハンセン、デグレンデレ、グロ。ほぼ短期登録メンバーだ。

女子ケイリン敗者復活戦

後が無い太田りゆだが、落ち着いたレース運びだった。残り2周で先頭を走る中国のタン・メンギともがき合いになるも、きっちりとまくり切り、そのまま独走でゴールを駆け抜けた。
これで、日本人選手は二人とも準決勝進出が決定。

女子ケイリン準決勝

小林優香、太田りゆ、ファンリーセン、ハンセン、デグレンデレ、ロスという「ガールズケイリンインターナショナルか?」と思わせるようなメンバー。
一方で、ここを突破すれば、メダルが見えてくると思われるほど層が厚いメンバーの準決勝となった。3着までが決勝へ進む権利がある。
ペーサー退避後、スピードがなかなか上がらないのを見て残り2周回で太田が発進。残り1周回となり太田を捲ろうとするハンセン、デグレンデレの内が空いたのを見て小林が切り込む。この段階で、小林は前に太田、横にハンセン、デグレンデレと行き場がなくなってしまい、先頭をずっと走ってスピードが落ちてくる太田と共に外側からくるデグレンデレ、ハンセン、ファンリーセンに先着され、4着入線、太田は力尽きて6着。小林は脚が残っているのに内に詰まったため、行き場を探した結果、「進路を保持しなかった」として降格を取られ、最終順位太田5着、小林6着で7ー12位決定戦に回ることとなり、ワールドカップ初戦での決勝進出を逃した。

女子ケイリン7-12決定戦

太田がペーサーの後ろの位置から、再び先行。小林は残り1周半から上がっていくモートンにつけ、「次は同じ失敗はしない」というように外側からモートンをかわし、最終4コーナーでは先頭に立った。追いすがるグロも寄せ付けず、1着。今大会ケイリン最終順位を7位とした。
太田は、ロング先行にチャレンジしたが、最終的には6着。最終順位12位で今大会を終えた。

女子ケイリン決勝

ペーサー退避後、ペーサーの後ろからそのまま先行したファンリーセンを最終周回、デグレンデレその外をハンセン、その後ろからリケイシと目まぐるしく動くも後ろの動きなど気にしないかのように逃げ切りを決めたファンリーセンが優勝。まくり脚の印象があるファンリーセンだが、展開次第で逃げても強いことを証明した。
2着はロシアのシュメルバ、3着にはリケイシが入った。

ファンリーセンのコメント

「センコーシマシタ(笑)大変だったけど。前の競走で動きをミスしたから、決勝では良いポジションが取れるよう気を付けて走ったわ。ハンセンが前に出てくるのは予想していたから、彼女の動きにも目を配っていて、リケイシが出たのをきっかけに、自分も加速…でも、掲示板を見たらまだ2周残っていて、焦っちゃった!」

緊張の消えた表情は日本でもなじみの気さくなファンリーセンに戻っていた。今まではあまり得意ではなかった長いスプリントを見事にこなし、勝利を勝ち取った彼女は、確実に力を増している。「日本での経験が今の自分とってとてもプラスになっているの」と自身の進化を実感し、楽しんでいるようだった。

■男子スプリント

決勝

全て2本連取で勝ち上がったオランダのラブリーセンとヨーロピアンチャンピオンである、オランダのフーグランド相手に1対1となり、3本目も走った
世界チャンピオン、グレーツァーの戦い。

お互い牽制しあい、トラックを戦闘機の空中戦のように蛇行するような戦いが繰り広げられたが、両者実力拮抗で1対1となり3本目までもつれ込んだ。
3本目は疲労の見えたラブリーセンに対し、世界チャンピオンの脚力は疲れを知らず、圧巻の先行勝利となった。

グレーツァーのコメント

「2回も3本目を走ったのは初めてで、とても大変だったよ。よかったのは大きなミスをしなかったこと。すごくハードな勝ち上がりだったけど、初戦を優勝で飾れて満足している。昨日は、ケイリンで位置どりがよくなくて、ちょっと失望したけど、今日取り返せてよかった」

チームの中でも「怖いくらいに強い」と評されるグレーツァーの強さは天井知らず。今シーズンも目が離せない存在になりそうだ。

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